公立中学校の帰国生受け入れ体制と学校選び

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入学試験もなく手続きも容易だが、学校選びは慎重に

「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

日本の中学生は9割以上が公立中学校に在籍し、国立中学校や私立中学校に在籍している中学生は少数ですが、帰国生は約3割が国立中学校や私立中学校に在籍しています。ただし、その傾向が見られるのは、東京・神奈川・千葉・茨城・京都に限られ、その他の道府県では、大多数の生徒が公立中学校に在籍しています。ここでは、公立中学校の帰国生受け入れ体制の特徴と学校選びの注意点について述べさせていただきます。

公立中学校の場合は、帰国生であっても学年相当の年齢に達し住民登録等必要な手続きをすれば、いつでも入学・編入学ができます。多くの自治体では原則として「学区制」のため、住所地に定められた学校に入学しなければなりません。その際に注意すべきことは、その学校にお子さんがなじめるかどうかという点です。海外に移住する前に暮らしていた地域にある学校であれば問題ないですが、初めて暮らす地域の場合は地元の学校の状況がよく分からないでしょう。もちろん、授業は文部科学省の学習指導要領に沿って行われているので、カリキュラムはどの学校も大差はありませんが、学校によって教育方針や学力の違い、学校行事や地域の活動などは異なることもありますので、その地域の独特の雰囲気も確認した上で、住所を定めると良いでしょう。「学校選択制」を実施している自治体であれば、学区にかかわらず学校を選ぶことができます。

公立中学校の学校選びのためには、お子さんと親御さんが学校を訪問するのが一番良いですが、その機会がない場合や、どんな学校があり、どんなサポートがあるのかなどを知りたい場合には、都道府県や市町村の教育委員会に問い合わせることをお勧めします。

自治体には「公立学校における帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細やかな支援事業」を実施しているところもあり、帰国生の受け入れの促進・日本語の充実・支援体制の整備に関する取り組みを支援しています。25の都道府県、15の指定都市、17の中核都市を含め、108の地域でこの事業を行っていますし、この事業を実施していない地域でも、これまでの経験と実績から独自の施策で受け入れとその後の教育に当たっています。

また、文部科学省でも、公立学校での受け入れ体制充実のため、「外国人児童生徒受入れの手引き」を作成していますし、情報検索サイト「かすたねっと」では、各都道府県・市町村の教育委員会等で公開されている、多言語による文書や日本語指導、特別な配慮をした教科書指導のための教材等、様々な資料を検索することができます。

公立中学校への帰国後の入学・編入学は、入学試験もなく手続きは容易ですが、学校選びを誤ると、お子さんも親御さんも苦労することになります。公立中学校に入学・編入学したものの、学校になじめず、私立学校へ編入することになったということは、よく聞くことです。慎重な学校選びをされますことをお勧めします。

(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校)

 

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当などを務める。他にサンディエゴ補習授業校教務主任。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

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