〈コラム〉Dr. 鈴木の病める者を癒やせ【最終回】

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ある病院長のがんの話

私が病室を訪れたとき、それは「悲しみの極み」
としか表現しようのないような光景でした。横たわった病院長の両眼は半開きとなり、抗がん剤のため骸骨のようにやせこけて、頭髪も眉毛もすっかり抜けて無くなっていました。
「主人は助かるのでしょうか」という夫人の懇願に、どう話したらいいのか懸命に答えを探しました。私の胸は時間を刻むようにドキドキ鳴っていました。そして私の迷いとは全く別の所で、事務的な言葉が口をついて出ました。
「希望は持てないと思います」
しばらく重苦しい沈黙が流れました。
「いくらかでも生命を延ばすことができないでしょうか」
「あなたが本当に奇跡を信ずるなら、そして実行を約束していただけるなら、私からの提案は用意できます」
私の提案というものは、「がん患者が必要とする蛋白質、ミネラル、ビタミンなど私の栄養補助食品」の規則正しい投与でした。
それから奇跡が起きたかのように病院長は急速な回復をみせ、退院したのです。仕事に復帰した病院長は、次第に一種の職業意識と自尊心に目覚めたようです。
「自分は最先端の西洋医学を修めた医学博士であり、私の回復は医大の先生方の治療の成果だ。栄養剤とか漢方薬まがいのカプセルでがんが克服できるわけがない」という思いが日増しに大きくなり、栄養療法は完全に止めてしまったのです。それから2~3カ月が過ぎた頃、訃報が届きました。
亡くなったという報せには、病院長が生前趣味で書いた油絵を印刷したテレホンカードが添えられていました。柔らかな色、淋しい静物、免疫力の弱い人が持つ特有の感覚が絵によく表れていて、私の悲しみも一層深かった事を今も思い出します。その「悲しみ」は今日も消える事がありません。

0719-eldersDr Suzuki Picture 〈プロフィル〉鈴木眞(すずき・まこと) 1935年生まれ。58年早稲田大学卒業。総合商社開発課長を経て日米合弁企業マーケティング担当取締役、日独合弁企業社長を歴任。のち脳血栓に倒れる。ゲリー・マーチン博士の指導によるビタミン・ミネラル投与法を実践して健康の回復に成功。米国ネーチャーズサンシャイン社日本代表などを務めた後、88年米国エルダース栄養科学研究所を設立して独自ブランド「M10-8」シリーズのサプリメントを開発。米国栄養薬理学界会員、栄養学博士(Ph.D in Metabolic Nutritional Science)。
ウェブ】www.eldersinternational.org

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