〈コラム〉ローン特約の落とし穴

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住宅不動産取引において、購入者が金融機関からローンを借り入れる場合、通常の売買契約書にはローン規約と呼ばれる契約事項があります。基本的に、ローン規約は「ローンが承認されない場合、購入者は契約成立後でも契約を解約できる」というものです。そして、通常、その規約の中の契約解約条件に「購入者の金融機関からのコミットメントレターが●日以内に発行されない場合」というものがあります。

コミットメントレターとは、固定・非固定利子率でのローンを借り入れる際、金融期間から提出される貸し付け同意書です。しかし、同意書といえども、コミットメントレターは“▲▲が満たされることを条件として”ローンの貸し付けを行うというものが多く、コミットメントレターが発行されたからといって、必ずしもローンが実行されるというわけではありません。
また、金融機関による物件の評価額の確認がローンの承認条件としてコミットメントレターに記載されている場合、「コミットメントレター」という表題になっていても、契約上はコミットメントレターとみなされません。
一度コミットメントレターが発行されると、購入者はいかなるほかの項目がローン承認の条件として記載されていても(物件の評価の承認を除く)、原則的に契約上購入を実行する義務が発生します。そのため、「現在の負債額の支払い」、「現在の経済状況の維持」、「雇用の維持」などがローンの承認条件となっている場合、購入者はそれら条件を満たす必要があります。
しかし、経済状況が大幅に変わった場合や、失業してしまった場合など、購入者がローン条件を満たすことができなければどうなってしまうのでしょうか。また、金融機関が突如発行済みのコミットメントレターを取り下げて(無効として)きた場合はどうなるのでしょう。
仮に、規定条件が満たされず、結果的にローンが却下された場合でも、購入者には物件購入の義務が残ります。購入する資金はないが、購入義務があるという最悪な状況が生じます。その場合、なんとか金銭的工面が可能であれば、購入者はその工面した資金で購入を果たすことができます。
しかし、資金を工面することが難しい場合、購入者は契約を締結したにもローンが受け取れないので購入ができず、契約に定められた購入義務を遂行しなかったという理由で、通常契約時に売却者へ支払われる頭金のすべてを支払い、契約を解除することが唯一の選択となってしまいます。つまり、頭金を支払うことにより、物件の購入義務から解放されるのです。購入者にとっては悔いの残る結末になります。
これらの最悪な状況をできるだけ回避するために、契約書の追加条文に「金融機関がローンを却下した場合、コミットメントレターの具体的条件・項目に関係なく、(その却下が)購入者の意図的な行為に起因のない限り、いかなる理由であれ、●日までに契約解除の通知を売却者へ提出することにより購入者は契約を解約できる」などの追加事項を追加することが最悪の事態を回避する一つの手段となります。
(弁護士 マリアン ディクソン)
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(「WEEKLY Biz」2009年12月18日号掲載)

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