〈コラム〉米日教育交流協議会・代表 丹羽筆人「在米親子にアドバイス」日米の教育事情

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日本の子どもの理数系の学力と職業志望

自分で見て、聞いて、肌で感じて確かめることが大切

国際教育到達度評価学会(IEA)が実施した2011年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2011)の結果が文部科学省より公表されました。今回の調査では、日本の小学生(対象は4年生)の得点が算数・理科ともに過去最高となり、文部科学省は08年度の学習指導要領改定で学習内容や授業時間数を増やしたこと、07年度からの全国学力調査などが成果を上げてきたことなど「脱ゆとりへの転換の成果」と評価しています。一方、中学生(対象は2年生)の得点は数学も理科も横ばいが続いていますが、順位では小中学生ともに上位5位以内を維持しています。日本の子どもの理数系の学力が国際社会においてトップクラスであるということは評価すべきでしょう。
一方で、同時に実施されたアンケート結果では、中学生の数学や理科の勉強への意欲・関心の低下が目立っています。「勉強が好きだ」は、算数・数学では小4で66%なのが中2では39%。理科では小4で83%なのに中2では53%。中2は数学、理科ともに国際平均より20ポイント以上低くなっています。また、「将来、自分が望む仕事につくために、数学、理科でよい成績を取る必要がある」では、数学が62%、理科が47%で、やはり国際平均より20ポイント以上低くなっています。「数学、理科を使うことが含まれる職業につきたい」では、数学が18%、理科が20%となっており、数学・理科ともに50%を上回る国際平均をかなり下回っています。
大学の理、工、農、医・歯・薬系学部の学生数の比率も3割弱にすぎませんが、ここ数年は理系を希望する受験生が増加する傾向が続いています。これは帰国生大学入試の受験生も同様であり、理数系の高い学力を発揮するという点で歓迎すべき傾向です。
ただし、帰国生が理科系学部を目指すのは大変です。文系の入試科目は英語と小論文のみという大学・学部が目立ちますが、理系では数学と理科2科目、小論文という大学・学部が多いのです。中には英語を課す大学・学部もあります。数学と理科は日本の高校数学や高校理科の履修内容から課されます。言語はもちろん、問題の解き方も異なりますし、現地校では履修していない分野も含まれます。現地校の数学や理科が得意な生徒でも入試で合格するレベルの実力を習得するのには努力を要します。理系の帰国生には厳しい数学や理科の学習で培った実力にさらに磨きをかけ、海外生活で身につけた英語力と異文化体験を発揮し、国際社会で活躍してくれることを願っています。
(次回は2月23日号掲載)(「WEEKLY Biz」2013年1月26日号掲載)
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