天時・地利・人和:古い智恵から現代アート

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第2回

作品「天時・地利・人和」(サイズ:高さ10メートル、幅15メートル、クイーンズカレッジ美術館にて、2008年)

作品「天時・地利・人和」(サイズ:高さ10メートル、幅15メートル、クイーンズカレッジ美術館にて、2008年)

孟子の「天時・地利・人和」は勝利の条件として知られており、中でも人和は最も重要で「以和為貴(和を以て貴と為る)」と言われてます。人間の和、自然と人間との和を重んずれば、和はやがて成功と平和をもたらす。この古い智恵はビジネスの世界でも使われますが、私は自分の絵画論に取り入れています。

ハート集結シリーズの作品づくりは、たくさんの人を巻き込んだ行動アートです。企画を支えてくれるボランティア、素材を提供してくれる人など、多くの人と心の交流をしながら作るので、作品だけが重要ではなく、プロセス全体を私のアートと考えています。企画は適当な時期が訪れると、母国台湾、留学先の日本、現在住んでいる米国のいずれか、あるいは合同で動き出し、良い人とめぐり合うことで前進します。そして、皆の力と心が合体することによって、自ずと良い結果が生まれます。これが私の「芸術即是理念(アートすなわち理念)」です。

人とのめぐり合わせは不思議なものです。中国には「以画会友(画を以て友に会う)」という言葉がありますが、兵藤ゆきさんとの出会いもアートを通してでした。最初のきっかけは仕事上での取材でしたが、同じ名古屋出身ということで話が弾み、アートの勉強をしたいということで交流が続きました。その年制作した「クリスマス・ラブツリー」では大いに助けられました。ラジオやコラムで全国に宣伝してくれたおかげで、少子化の影響でなかなか集らなかったおしゃぶりが無事に20万個集まりました。その中の一つは兵藤さんの息子さんの思い出の品でした。これは制作過程における1コマで、このような人間ドラマを展開しながら作品は完成へと導かれていきます。

林世宝

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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