〈コラム〉集夢計画61「古文化の十二支、現代ジャケットを着る」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第66回

メトロカードの十二支。左から亥(猪)、巳(蛇)、戌(犬)。現在辰(龍)と未(羊)を制作中。5月26日(日)の台湾祭「Passport to Taiwan Festival」の会場、ユニオンスクエア北側に写真にある作品を持って行きます。イベントが開かれる正午から午後5時まで私=筆者。写真中央=も会場にいますので、使用済みのメトロカードがありましたらお持ちください。たくさんの人に会えるのを楽しみにしています。

日本では令和の幕開け。昭和から平成に元号が変わった30年前の映像は、留学生の私にとって、日本文化の象徴的瞬間として記憶に残っています。時代と共に人と社会を取り巻くさまざまが変化します。アート界では、19世紀の欧州が発端のアールヌーボー(新芸術)から建築や絵画などが現代風に変化。フランス風、イタリア風と独自の作風が生まれ、自己流を表現する作家が評価されるようになりました。

私が行動アートを始めたのがちょうど30年前。ペン、携帯電話、野球のボールなどの不用品やリサイクル品を提供してもらい作品にしてきました。素材と同時に、思い出や夢が一緒に集まってくるので、ハート集結シリーズとよんでいます。最近取り組んでいるのは、メトロカードを使った十二支。世界中から人が集まるニューヨーク。人種、言葉、文化が異なる老若男女、全ての人が12の動物のどれかに当てはまるのは実に面白く親しみが湧きます。メトロカードは、お金を払えば誰でも自由に地下鉄やバスで希望の場所に運んでくれる優れもの。夢を追う人、労働者の味方であり、無差別の象徴です。時代と環境を反映して変化する文化。時は流れ、家族は伝承され、全てのものが輪廻(りんね)転生していく中で、変わらず大切にしたいと誰もが望むのが「愛と平和」。私のアートに一貫したテーマでもあります。

これまでに8000枚のカードが集まり3体が完成しました。ペイントは使わず、カードの色だけを用い、ラインは地下鉄のマップのようにフリースタイル。現代風ジャケットを着た十二支、伝統文化と現代文化の融合です。12体を完成させるには、あと2万枚ほどのメトロカードが必要です。5月26日(日)、ユニオンスクエアに展示しますので、ぜひお越しください。

(次回は7月第3週号掲載)

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック
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