買収先に言われた「私の何を理解しているのか」

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〝トランジション〟(4)双方向のコミュニケーション

「対話で変える!」第24回

こんにちは。COACH A竹内です。皆さんは、職場でどんな会話をしていますか。
また、どんなコミュニケーションが有効だと感じていますか?
多くの職場では、目の前の急ぎの作業や手続に関する内容が日々の「会話」を占めているのではないでしょうか。一方で、継続的な改善や生産性の向上にむけた環境作りや、一人ひとりが自らの役割を熟考し、リーダーとして成長するための「対話」はどれだけできているでしょうか?
「対話」とは、考え方などが異なる者同士が意見・情報交換や価値観のすり合わせをするプロセスです。
日系企業幹部であるAさんは、あるアメリカ企業を買収する際、「やるべき手続、指示内容の準備は万全」と考えていました。しかし、買収後の統合ステージになると次第に余裕が消えたそうです。
買収側の日本本社の上司からの指示を伝達しても、「私はあなたのことをまだ何も知らないが、あなたも私の何を理解しているのか」と言われたのがきっかけだったそうです。
そこでAさんはこの難局を乗り切るためにどう意識を変え、何を備え、実行すべきか、コーチと対話しました。
Aさんはまず、「一方的に上から指示を与える姿勢」をやめ、「双方向のコミュニケーション」を心がけるようにしました。そして、被買収側経営陣の一人ひとりと1対1で真摯に対話を始めました。お互いを知りあい、信頼関係を築いていきました。すると、彼らも、「買収を活かし、共に発展したい」と心から考えていることが分かってきました。
また、相手も本社とつなぐ役割を担うAさんに理解を示してくれるようになり、物事がスムーズに進むようになったそうです。
Aさんが現在のポジションに適応しその責任を果たす“トランジション”のプロセスには、相手の話をよく聞いた上で自らの考えも伝えるという「双方向のコミュニケーション」がとても効果的だったわけです。
多忙なスケジュールの中、「真のグローバルリーダーになる」ために、Aさんは現在も定期的にコーチと「1対1のコミュニケーション能力」を磨いています。
(次回は11月第4週号掲載)

 

「COACH A」竹内 健【執筆者】
竹内 健(たけうち・たけし) エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職

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