〈コラム〉働きぶりを間近で見られずより厳しい管理に

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ワーク・スケジュールについて(4)

「HR人事マネジメント Q&A」第4回
HRMパートナーズ社 副社長及びパートナー 上田 宗朗

前回=7月28日号掲載=では「従業員の自宅勤務がエグゼンプション・ミスクラシフィケーション問題をより顕在化させた」と題し、残業代の支払いが免除されるエグゼンプト従業員なのか、或いは残業代支払いが法によって義務付けされている時給払いのノンエグゼンプト従業員なのか、ここに至って雇用主側は明確且つ正しく分類せざるを得ない岐路に立たされていることを取り上げました。前回と重複する部分もありますが大事な内容ゆえ更に詳しく解説します。

とにかく、何故に顕在化したか? これまでその仕事ぶりをいつも見てきた上司達ですが、一転して部下達の働きぶりを間近で見られない状態になったことから自ずと、エグゼンプト従業員の部下に対してはゴール(目標)を達成したか否かをより厳しく測らざるを得なくなり、対するノンエグゼンプト従業員の部下に対しては時間の管理を厳しくせざるを得なくなる。

正しくはノンエグゼンプト従業員なのを意図したかどうかはさておいてもこれまで誤ってエグゼンプトに位置付けされてきた従業員達ですので、就労時間・就労スケジュールに関して急に上司達がうんぬんかんぬんと厳しく詰め寄り始めてきた場合、「おかしいですね、エグゼンプト従業員扱いしておきながら、なぜに就労時間を厳しく管理しようとしてくるのですか?」と反駁されざるを得ない。

では実際に起こり得る例として、雇用主側は、もし仮に、名目上はエグゼンプトに分類している自宅勤務の従業員に向けてすぐにとりかかって欲しい仕事を指示した際に、「お願いされたことは、まぁ今夜にでもやっておきます」とか「今から所用で外出するのですぐにはできません」とか「今週末まで待って下さい」などと言われたら、どう返すつもりなのか?

前々で触れましたように、従業員のFLSA(Fair Labor Standards Act)エグゼンプション基準テストには「当該職務は、通常、自由な裁量と独自の判断に基づいて仕事をする」とあります。加えて同テスト内には「ルーティンワークは仕事全体のうちの僅かな量である」と解釈できる項目もありますが、これらエグゼンプトの判断基準とされる内容と常々上司が下達する職務指示との間の乖離をどう説明するのか? あるいは部下達が合点のいく説明ができるのか?

以降は次回に続きます。

(次回は9月第4週号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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